(2012年5月5日01時39分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120504-OYT1T00811.htm
国内で1基だけ稼働している北海道電力泊原子力発電所3号機が5日、運転を停止する。全国50基の原発がすべて止まり、全電源の3割が失われる異常事態だ。
原発の稼働がゼロになるのは、原発がわずか2基だった1970年以来、42年ぶりである。
東京電力福島第一原発の事故の影響で、定期検査で止めた原発を、検査を終えた後も再稼働できなくなっていることが原因だ。
事故の教訓を踏まえ、原発の安全性を再確認するのは重要だ。だが、政府の原子力政策が迷走し、再稼働への手続きにブレーキをかけた点は看過できない。
菅前首相による突然の「脱原発宣言」など場当たり的な対応は、原発への不信を増幅させた。「やらせメール問題」をはじめ、電力会社や原子力安全・保安院の不祥事も、足を引っ張った。
野田首相らは4月中旬、新たな判断基準で関西電力大飯原発3、4号機の安全を確認し、再稼働は妥当だと判断した。しかし、地元の理解を得られず、調整はなお難航している。枝野経済産業相の発言がぶれた影響も大きい。
このままでは電力需要が膨らむ夏に間に合わない恐れがある。
特に大飯原発のある関電管内は原発依存度が高い。再稼働しないと、猛暑時の電力不足は約15%にのぼるという。法律による節電の義務づけや計画停電が、必要になるかもしれない。
首相が先頭に立ち、大飯原発の再稼働実現に向け、地元の説得に全力を挙げるべきだ。
深刻さは関西にとどまらない。節電などの効果を入れても、全国の夏の電力需給は綱渡りだ。15基以上の原発が動いていた去年に比べてはるかに厳しい。昨夏のように、節電すれば乗り切れる、と楽観するのは危険である。
経団連が先月に実施した調査では、製造業の7割が電力供給に不安があれば減産すると答えた。
原発を代替する火力発電の燃料費は、全国で年3~4兆円も余計にかかる見込みで、電力料金のさらなる値上げも懸念される。電力不足が景気を冷やし、産業空洞化に拍車をかけることになろう。
厳しい節電目標を家庭に強いれば、真夏の暑さが高齢者など弱者の健康を損なう恐れがある。
原子力規制庁の設立が遅れ、大飯以外の再稼働手続きがストップしているのも大きな問題だ。
与野党は規制庁設置を巡る協議を進め、再稼働の審査にあたる新体制作りを急がねばならない。
(2012年5月5日01時39分 読売新聞)
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